2024年5月22日
櫻井幸雄の独自データ
独自調査で注目物件が判明 全国新築マンション「人気指数」 第6回
2024年1月~3月速報
分譲中マンションで最高人気となったのは「ブランズ自由が丘」
2024年1月1日から3月31日までの3ヶ月間で、分譲中マンションで人気物件の目安となる人気指数「1」以上を記録したのは、全国で148物件。前回調査(2023年7月1日〜9月30日)では130物件だったので、1割以上増えたことになる。
そのうち、短期間に完売する可能性が高い人気指数「5」以上を記録したマンションは、全国で18物件、前回調査では6物件しかなかったことと比べると大幅増だ。
以上の結果から、「マンション市況に活気が戻ってきた」といえそうだ。
いやいや、新築マンションはもともと売れ行き良好なんでしょ、という人もいるだろう。たしかに、マスコミでは「高額化したマンションが飛ぶように売れている」との報道が多い。「中国人が新築マンションを買いあさっている」との記事も目立つ。
が、申し訳ないが、いずれも事実ではない。
2015年頃、マスコミは盛んに「東京五輪の後、マンションは暴落する」と書き立てた。当時、その記事を信じた人は、その後「ずいぶん、いい加減なことを書いたものだ」とあきれた。
同じくらいいい加減なのが、「高額化したマンションが飛ぶように売れている」であり、「中国人が新築マンションを買いあさっている」だ。
新築マンション価格は全国的に上昇し、特に東京、大阪の価格高騰は著しい。価格が大きく上昇した新築マンションが、飛ぶように売れたら、それは異常な事態である。
中国人、特に大陸の中国人は安い物件をさらに値切って買うのを好む。彼らが狙うのは、古い中古マンションで、値引きしない新築マンションに興味はない。
実際のところ。価格が大きく上昇した都心マンションは、2022年の後半から売れ行きが減速していた。と同時に、郊外の新築マンションを買おうとする人の気持ちも「マンションの価格上昇」という報道により、冷めてしまった。
「売れ行き好調」という報道とはウラハラに、実際の不動産市況は下がり気味だった。
それが、上向き始めた、というのが、今回調査で得られた最大の感触である。
今回調査で最も高い人気指数を記録したのは、東急東横線自由が丘駅に近い小規模マンション。自由が丘駅から徒歩5分に建つ「ブランズ自由が丘」で、人気指数「16.0」だった。
このマンションは地上3階地下1階・全24戸の小規模・低層マンションで、約91㎡〜約155㎡の2LDK〜3LDKが1億8000万円から4億1000万円で分譲された。
住戸が大型である分、価格は高め。しかし、自由が丘駅に近く、落ち着いた第一種低層住居専用地域であること、世田谷区初(建設地の住所は、世田谷区奥沢となる)の ZEHと低炭素建築物同時取得など建物のつくりのよさが高く評価された。
続く第2位は福岡県の「ザ・パークハウス 大濠翠景」(全30戸で人気指数15.1)
このほか、全31戸の「ブランズ渋谷代々木公園」は約44㎡〜64㎡の1LDK〜2LDKが8590万円~1億6690万円の内容で人気指数「12.8」に。さらに、「ザ・パークハウス 千代田六番町」(人気指数10.1)までが、人気指数10以上のマンションとなる。
以上4物件のうち東京23区内で販売された「ブランズ自由が丘」、「ブランズ渋谷代々木公園」、「ザ・パークハウス 千代田六番町」は早々に完売した。
総戸数が100戸を超える規模で、高い人気指数を達成したマンションとしては、「ルフォン船堀 ザ・タワーレジデンス」(全133戸で、人気指数5.9)や、「パークシティ高田馬場」(全325戸で、人気指数4.0)、神奈川県川崎市の「パークタワー向ヶ丘遊園」(全201戸で人気指数4.1)などに注目すべきだろう。
減速する地方のマンション市況。その先は
東京以外の場所をみると、人気物件が増えて市況に活気が感じられるのは大阪を中心にした近畿圏。特に大阪市内の中心部や北摂・阪神間で人気物件が目立つ。総戸数173戸で人気指数「4.3」の「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」は、文句なしの人気マンションとなる。
大阪以外の地方都市では人気物件が減り、人気指数も全般的に低めの傾向が続いている。
地方都市では、もともとマンション購入希望者の人数が限られているため、今は調整期と考えられる。今回の調整期は長引くかもしれない。
しかしながら、後述するが、販売前マンションの注目度を計る事前人気指数では地方都心の物件が増えている。今後の動向を見守りたい。
販売開始前で超高人気となったマンション
販売開始前で人気物件の目安・事前人気指数「2」以上となったのは、全国で37物件。半年前の調査時とまったく同じ物件数となった。1年前の調査では29物件、その前は23物件だったので、増加を続け、高い水準に留まっていることになる。
そのなかで、販売が開始されれば短期間で完売する可能性が高い「事前人指数10以上」となったのは11物件だった。半年前の前回調査では8物件。1年前の前々回調査では3物件だったので、右肩上がりで増えている。
事前人気指数で最高値となったのは大阪市内の「ローレルアイ天満宮」で、事前人気指数は驚異の「37.7」。これは、全18戸と総戸数が少ないことも理由だろう。販売が始まれば、瞬間蒸発的に完売する可能性が高いマンションである。
それに続く、高人気指数物件は、いずれも東京23区内のもの。第2位は「パークタワー大森」(全97戸)で、事前人気指数は「26.7」。第3位は「クレヴィア荏原町GARDEN」(全71戸)で、事前人気指数「24.4」。いずれも、100戸近い戸数規模なので、注目度の高いマンションと認定される。
このほか、戸数規模が大きく、事前人気指数が高いマンションとして、「リビオタワー品川」(全815戸で、事前人気指数7.9)と「リビオシティ文京小石川」(全522戸で、事前人気指数5.3)を挙げるべきだろう。
日鉄興和不動産のマンションブランドである「リビオ」は、価格を抑えて売り出される傾向があり、その点に期待する購入検討者が多いと推測される。価格次第で人気はさらに上がってゆくものと考えられる。
「人気指数」、「事前人気指数」の上位マンションをエリアごとに公開
販売中マンションの「人気指数」、販売前マンションの「事前人気指数」をエリアごとに調査し、後述する人気物件と認められる条件をクリアした上位マンションを公開する。
今回は、全国を以下10エリアに分けた。
「東京23区内・山手線内側エリア」
「東京23区内・山手線外側エリア」
「東京都市部・埼玉エリア」
「神奈川県エリア」
「千葉県・茨城県エリア」
「栃木県・宮城県・北海道エリア」
「愛知県エリア」
「京都府・滋賀県・奈良県エリア」
「大阪府・兵庫県エリア」
「広島県・山口県・福岡県・沖縄県エリア」
10のエリアごとに「人気マンション」と認定される物件をリスト化して公開する。
これに加えて、全国の販売前マンションから「事前人気指数」が高い物件のリストも公開する。
2024年1月〜3月人気指数物件・事前人気指数リスト
・東京23区内・山手線内側エリアの「マンション人気指数」高位物件
・東京23区内・山手線外側エリアの「マンション人気指数」高位物件
・東京市部・埼玉県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・神奈川県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・千葉県・茨城県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・栃木県・宮城県・北海道の「マンション人気指数」高位物
・愛知県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・京都府・滋賀県・奈良県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・大阪府・兵庫県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・広島県・山口県・福岡県・沖縄県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・全国の「事前人気指数」上位物件
「人気指数の計算方法」
「新築マンション人気指数」は、資料請求数と販売センター来訪者、そしてマンションの総戸数から算出されるもの。総戸数からみて、多くの人が資料請求をし、販売センターに訪れた物件は指数が高くなり、人気が高い物件とみなされる。
調査期間は3ヶ月。3ヶ月間の資料請求数と販売センター来場組数を聞き取り調査する。資料請求数は10分の1にカウントし、来場組数の実数と合算、それを総戸数(販売対象戸数)で割って、指数を出す。指数1.0以上となるマンションを、人気物件として認定する。
指数が「5.0」を超えると即日完売が発生しやすくなる。「10」を超えれば、全戸が一瞬にして売り切れてしまう可能性が高い。
実際、人気指数10以上のマンションは宣伝を控える。これ以上、客が集まっても対応しきれない、むしろ販売センターが混乱して危険と考えるからだ。だから、「そんなマンションがあったの?知らなかった」という事態が起きがち。大げさな表現ではなく、過去の超人気物件の多くはそのようにして消えていった。
「事前人気指数の計算方法」
「販売前人気指数」は、モデルルームを開く前の資料請求時点での人気度を探るもので、「これからの要注目物件」が浮き上がる指数となる。
その算出方法は、資料請求が始まった時点から調査日までの資料請求数を聞き取り調査する。その数を総戸数で割って指数を算出。指数「2」以上の物件が、販売前人気マンションとして、認定している。