都心以外では概ね実需向きマンションが主体に




首都圏郊外に位置する東京市部、神奈川県、埼玉県、千葉県では、もともと投資に適した物件は少なかった。一部、神奈川県の武蔵小杉駅周辺や埼玉県の大宮駅と浦和駅周辺、千葉県の千葉駅周辺などで、投資目的の購入者が注目する物件がみられた程度だ。とはいえ、実需層も注目していたため、都心部のように投資家が殺到する新築分譲マンションはなかった。
その傾向が続いているのだが、高人気指数となるマンションは数が減っている。
東京市部の「リビオ吉祥寺南町」(人気指数12.1)や「Brillia 三鷹禅林寺通り」(同7.6)、神奈川県の「パークホームズ大倉山ザ・テラス」(同7.3)が突出して人気指数が高いマンション例となっている。
いずれも住宅地として人気が高い地名だ。「リビオ吉祥寺南町」の吉祥寺南町は、以前漫画家の楳図かずお氏の自宅デザインが派手すぎるのでは、と物議を醸したことがある場所だ。
吉祥寺駅から徒歩10分以内で発売される新築分譲マンションの数は極めて少ない。その条件を満たし、しかも吉祥寺南町である、吉祥寺に地縁のある人を中心に実需層が高い関心示したとみるのが順当だろう。
首都圏郊外は、投資目的の購入者が少なく、実需層がマンションを求める場所。その動きがさらに強まると予想される。
実需向け新築分譲マンションの人気指数が上がり始めた東海エリア

今回、愛知県で高人気物件と認定されるマンションが4つ登場した。
わずか4つと思うかもしれないが、注目すべき現象といえる。というのも、愛知県では人気マンションの数が激減していたからだ。名古屋駅周辺や栄周辺の新築マンション価格が高くなりすぎた、とされたのは2022年頃。以後、新築マンションの人気が落ちる状況が生まれてしまった。
しかしながら、高額化した名古屋のマンション価格は、その後、価格上昇が止まり、据え置かれた。その間、東京でも大阪でも新築マンション価格が上がり続けた。結果として、昨年から、名古屋のマンションが割安に思える現象を生じた。
名古屋中心地から離れた住宅地系の場所でも、同様に割安感が生じている。そして、今、実需層が郊外の新築分場マンションに注目し始めた……この動き、愛知県から東海圏に広まって行くことが予想される。
販売物件減少の動きが出ている近畿圏

前回調査に続き、今回調査でも近畿圏では、人気マンションの数が減っている。1年前の調査で、京都府、滋賀県、奈良県、大阪府、兵庫県で31物件が人気マンションに認定されたが、半年前の調査では20物件に減少。今回調査では23物件と若干改善したが、少ないことに変わりない。
京都府は8物件から3物件に。大阪府は15物件から10物件に減少した。
原因は分譲価格が上がったことにあるだろう。
このまま売り出しても、期待通りの結果は出そうもない。なので、発売戸数を減らすという作戦である。
この販売調整は、首都圏でも2023年から起きていた。同じ動きが近畿圏でも起きようとしていると考えられる。
人気指数が「5」を超える高人気物件は「リビオシティ神戸名谷」(人気指数10.5)だけだ。同マンションの最寄り駅・名谷駅は神戸市営地下鉄西神・山手線の駅で、ニュータウンが開発されている場所。その立地特性からいって、堅実な実需層が購入を検討していると考えられる。実需向けマンションが高い人気を示しているわけだ。
近畿圏でも「投資から実需」の動きが出ているのだろう。
その他エリアの高人気マンション
最後に、その他エリアの人気マンションをまとめよう。

福岡や沖縄、札幌などの地方都市では発売される新築分譲マンションの件数がさらに大きく減ってしまった。
このように大幅な物件減少が生じると、数少ない販売物件の人気が上がる現象が生じがちだ。今後、その動きが出るのか、注目したいところだ。
そのなか、注目したいのは北海道の「ブランズ円山裏参道レジデンス」(人気指数3.0)だ。建設地は、北海道神宮に近い円山エリアで裏参道と西25丁目通りが交差する場所……札幌駅周辺や狸小路・大通周辺ではなく、以前から道民の憧れを集める高級マンションゾーンだ。ここでも、地縁のある人にウケる立地のマンションが人気を高めているわけである。
販売開始前で超高人気となったマンション

販売開始前で人気物件の目安・事前人気指数「2」以上となったのは、全国で39物件。半年前の調査で30物件、1年前は37物件だったので、少しだけ増えていることになる。
そのなかで、販売が開始されれば短期間で完売する可能性が高い「事前人指数10以上」となったのは13物件あり、半年前調査時の6物件から大幅な増加だ。
事前人気指数で最高値となったのは東京都品川区に建設される「ブランズ武蔵小山」で、事前人気指数は驚異の「62.9」。全36戸で販売総戸数が30戸という戸数規模なので、高指数となった。
注目する人が多いのは、武蔵小山商店街パルムと戸越銀座商店街の中間に位置する便利さ、楽しさがあることと、武蔵小山駅から徒歩10分であるため、価格が抑えられるのでは、という期待感からだろう。
価格が抑えられれば、投資向きとしても、実需向きとしても購入希望者が殺到し、即日完売になることは間違いない。6月下旬販売開始予定だ。
それに続く、高人気指数物件は「プラウド吉祥寺本町」(販売総戸数36戸で事前人気指数37.7)。吉祥寺駅から徒歩5分~6分の便利な立地であるため、これも即日完売の可能性が高い。
販売総戸数が200戸を超える大規模で、事前人気指数が高かったのは「パークタワー品川天王洲」(276戸で、同26.3)。品川エリアで人気マンションが続出しているなか、投資としても、実需用としても魅力が大きいと判定する人が多いためと考えられる。免震構造で、ZEH−Mオリエンテッド、低炭素建築物認定……今求められる質の高さも備えた超高層タワーマンションだ。
このように、立地とつくりで興味を引く物件が出てきたことで、新築分譲マンションへの関心が高まっている。となると、「マンション暴落」を期待するのはむずかしそうだ。
「人気指数の計算方法」
「新築マンション人気指数」は、資料請求数と販売センター来訪者、そしてマンションの総戸数から算出されるもの。総戸数からみて、多くの人が資料請求をし、販売センターに訪れた物件は指数が高くなり、人気が高い物件とみなされる。
調査期間は3ヶ月。3ヶ月間の資料請求数と販売センター来場組数を聞き取り調査する。資料請求数は10分の1にカウントし、来場組数の実数と合算、それを総戸数(販売対象戸数)で割って、指数を出す。指数1.0以上となるマンションを、人気物件として認定する。
指数が「5.0」を超えると即日完売が発生しやすくなる。「10」を超えれば、全戸が一瞬にして売り切れてしまう可能性が高い。
実際、人気指数10以上のマンションは宣伝を控える。これ以上、客が集まっても対応しきれない、むしろ販売センターが混乱して危険と考えるからだ。だから、「そんなマンションがあったの?知らなかった」という事態が起きがち。大げさな表現ではなく、過去の超人気物件の多くはそのようにして消えていった。
「事前人気指数の計算方法」
「販売前人気指数」は、モデルルームを開く前の資料請求時点での人気度を探るもので、「これからの要注目物件」が浮き上がる指数となる。
その算出方法は、資料請求が始まった時点から調査日までの資料請求数を聞き取り調査する。その数を総戸数で割って指数を算出。指数「2」以上の物件が、販売前人気マンションとして、認定している。
