2024年11月20日
櫻井幸雄の独自データ
独自調査で注目物件が判明 全国新築マンション「人気指数」
2024年7月~9月で大きな動きがわかった
分譲中マンションで1600組もの来場者を集めたのは「リビオシティ文京小石川」
首都圏では「高価格だが、人気は低下」
2024年7月1日から9月30日までの3ヶ月間で、分譲中マンションで人気物件の目安となる人気指数「1」以上を記録したのは、全国で115物件。半年前の前回調査(2024年1月1日~3月31日)では148物件だったので、大幅に減ったことになる。
しかしながら、1年前の調査で人気マンションと認められたのは全国で130物件だったので、それと比べれば1割減った程度……とはいえ、人気マンションが少なくなったことに違いはない。
短期間に完売する可能性が高い人気指数「5」以上を記録したマンションの数も減った。その数は全国で7物件。半年前の前回調査では18物件だったので半分以下となったのだが、ここでも1年前との比較を試みると、評価が変わる。1年前の調査で人気指数「5」以上は6物件しかなかったので、今回はそれとほぼ同じ水準ということになる。
つまり、新築マンション市況は1年前から勢いが落ちていたのだ。少なくとも、私が行っているマンション人気指数調査では、そのような結果が出ていた。
一方で、新築マンション価格は下がらなかった。
下がるどころか「価格は相変わらず上がり続けている」というデータが1年前も、そして今も出されている。
一部のマンションで価格が上がり、高止まりしているのは事実だ。
この「価格が上がっている」という事実から、新築マンションの人気は相変わらず高いと思ってしまう人は多い。
しかしながら、「価格が上がっている」から「人気が高い」とは限らない。
新築マンション価格があまりに高くなれば、当然ながら、買う気をなくす人が増える。人気は下がるわけだ。それでも、販売価格を下げなければ、「価格は高い」という状況が維持される。つまり、「低人気だが、高価格」の状況である。
全国、特に首都圏の新築マンション市況では、1年前からその状況が生まれていた。
その結果、エリアごとに異なる動きが生じている。
たとえば、23区内の山手線内側エリア=純粋な都心部では、投資家が殺到する物件が減っている。それに対し、相変わらず人気マンションが多いのは山手線外側エリア。そこでは、1LDK、2LDKを備えるマンションの人気が上がっている。
東京市部、神奈川、埼玉、千葉の首都圏郊外エリアでは、1LDK、2LDKのコンパクト住戸をそろえる新築マンションで高人気事例が出ている。
そこから考えられるのは、シングル女性が積極的にマンションを買っている状況。新築マンション購入のプレイヤーが投資目的の男性から、自ら住む目的のシングル女性に変わったのではないか、という仮説が思い浮かんでくる。
一方、近畿圏では首都圏と異なる動きが出ているし、他の地方エリアでは首都圏とも近畿圏とも異なる動きがある。興味深い動きを、エリアごとに解説したい。
山手線内側の都心部では、定借マンションの人気ぶりに注目
●23区内・山手線内側の人気マンションランキング
今回調査で最も高い人気指数を記録したのは、山手線内側の小規模マンション。白金台駅から徒歩9分に建設される「ブランズ白金台五丁目」で、人気指数「9.0」だった。
都心部でも有数の高級マンションエリアの白金台で、プラチナ通り(外苑西通り)から一歩奥に入った場所に建設される、全32戸の小規模マンションである。
32戸中19戸が90㎡以上となり、価格は先着順販売住戸で2億900万円から4億9900万円。憧れる人は多いものの、この金額では購入できる人が限られる。そのため、「あっという間に完売」とはなっていない。2年前であれば、もっと安く売られただろうこともあり、投資目的の購入者が殺到して即完売となっただろう。
現在、都心部の超高額マンションはゆっくり販売が進んでいる……それが、現在の都心部(山手線内側エリア)の実情だ。
そのなか、人気の高さで注目したいのが「リビオシティ文京小石川」だ。人気指数「3.5」はさほど高くない数字に思えるが、総戸数522戸の大規模であることを勘案すれば、人気指数「3.5」はとんでもない高指数となる。10月14日まで行われた第1期1次販売に向け、9月30日までに2480件もの資料請求があり、約1600組が販売センターを訪れたからだ。
文京区内で小石川植物園に近い住宅ゾーンに建設されるマンションで、定期借地権(以下、定借)方式を採用。定借マンションのため価格が抑えられるのでは、と考える人が多くなったが、第1期1次の価格は一般の人が想像するほど安くなかった。
最多価格帯が1億2000万円台。70㎡ほどの3LDKが1億円を超えるくらいの設定だ。都心部の定借マンションは、以前ほど安くされない。その分、建物のつくりは初期定借マンションより格段に上げている。これは、近年、東京都心部で分譲される定期借地権マンションの共通する特徴なのだが、投資目的で購入しようと考えていた人にとっては期待外れの価格設定になったはずだ。
一般の方はいまだに「定借マンションは2割、3割安い」と考えがちだ。しかし、それほど安い物件は建物のつくり、設備のレベルが低く、下がり天井は随所に。そして、「ディスポーザー?そんなもの付けません」という内容だった。
チープなつくりでも、投資目的の購入者は気にしなかった。それは、自ら住む目的ではなく、人に貸したり、転売する目的で購入したからだ。
それを知らない人が「定借マンションは安い」と言い続けてきたの
結果的に、「リビオシティ文京小石川」の購入者は実需層(投資目的ではなく、自ら住む目的で購入する人たち)が多くなるはず。それは、同マンションの大きな利点となるだろう。
投資目的の購入者が少なければ、賃貸に転用される住戸も少なくなる。だから、住み心地が高まるからだ。
「リビオシティ文京小石川」は、都心部で静かな暮らしを満喫したいファミリー層に絶好のマンションと評価される。
準都心部では、「女性シングル」がマンション購入に動き出し……
●23区内・山手線外側の人気マンションランキング
人気物件の数が少ない山手線内側エリアに対し、人気物件豊富なのが準都心部。東京23区内でもJR山手線の外側に位置するエリアだ。
半年前の調査では45物件が人気マンションとして認定され、今回
山手線外側エリアでは「5000万円台から」、「6000万円台から」という価格設定の新築分譲マンションが目立つ。この価格に「?」を示す読者も多いだろう。東京23区内新築マンション平均価格は1億円前後のはず……と。
じつは、「23区内はもはや1億円」とされているのは、70㎡換算の金額。「十分な広さを備えた3LDKを23区内で購入すれば、1億円くらいします」という目安だ。
これに対し、実際に23区内で増えているのはコンパクトタイプと呼ばれる住戸。1LDKと2LDKの間取りだ。なかにはワンルームの間取りもある。
それらは3LDKよりも狭い(場合によっては半分の広さ)であるため、価格が抑えられる。
一例を挙げると、「パークホームズ浅草橋」(人気指数2.7)は、約31㎡というコンパクトな1LDKが4120万円からの設定。「ジオ練馬富士見台」(同2.3)は、約54㎡の2LDKが6090万円からの設定だ。
とはいえ、23区内の1LDKや2LDKで「5000万円台から」とか「6000万円台から」という価格設定を実現するのは、面積を抑えるだけでは不十分。駅から少し離れた場所――具体的には駅から徒歩5分以上のマンションが多くなってしまうのが実情だ。
「コンパクトで駅から5分以上である分、価格も抑えられている住戸」は実需層の購入が多い。投資目的の購入者は、「駅から徒歩5分以上の物件は資産価値が低い」と考え、敬遠するからだ。
しかし、投資目的ではなく自ら住む目的でマンションを探している場合、「駅から徒歩5分から10分」は許容範囲となる。その分、価格が抑えられていれば、検討に値するマンションとなる。
そう考える購入者が準都心部で増えた。さらに、そのような購入者の中にはシングル女性も多く含まれている、というのが現場取材を続けている私の実感だ。
その背景には、「シングル女性はここ10年ほどマイホーム購入をがまんしてきた」という事実がある。
2015年以来、23区内では、投資向けに新築マンションを購入されるケースが増え、その動きが新築マンション価格を押し上げた。
その時期、息を潜めていたのが、シングルの女性。投資目的ではなく、自ら住む目的でマンションを探すが、あまりに高額の物件には手を出さない購入層である。
そのシングル女性が、インフレによる家賃高騰で、マンション購入
シングル女性がマンションを買う動きは、東京23区の外側でも起きている。次は、その動きを見てみよう。
首都圏郊外部でも高まるコンパクト住戸の人気
●東京市部の人気マンションランキング
人気指数が高い新築分譲マンションに40㎡、50㎡の1LDK、2LDKの住戸が目立つのは、首都圏郊外でも同様。東京市部、神奈川県、埼玉県、千葉県でも「1LDKから」「2LDKから」の物件が多くなっているし、人気も高まっているからだ。
この郊外部ならば駅に近い新築分譲マンションを探しやすい。
たとえば、東京市部では「ローレルコート西国分寺」(同2.2)がある。販売されている住戸は1LDKからの設定で、建設地はJR中央線西国分寺駅から徒歩2分だ。
西武国分寺線小川駅から徒歩1分の「アトラスタワー小平小川」(同1.3)も駅に近く、1LDKからの間取り構成だ。西武新宿線花小金井駅から徒歩4分の「ルネ花小金井ザ・レジデンス」(同1.2)でも1LDKの住戸がある。
●神奈川県の人気マンションランキング
神奈川県では「ブランシエラ横浜瀬谷」(同3.9)が「1LDK+書斎から」で、「ザ・ライオンズ武蔵小杉」(同3.0)は「2LDKから」だ。いずれも価格未定ながら、相鉄線瀬谷駅から徒歩2分の「ブランシエラ横浜瀬谷」ならば価格が抑えられ、すでに販売が終わった住戸例では1LDKタイプが4000万円台で購入できた。相鉄線からの都心アクセスが向上している現在、シングル女性にも十分魅力的なマンションになっているわけだ。
●千葉県・栃木県の人気マンションランキング
そのほか、価格が明らかになっている物件でいえば、千葉県の「ウエリス南行徳駅前」(同1.1)が東京メトロ東西線南行徳駅から徒歩2分で、1LDKが2998万円からの設定。この価格で駅に近いマンションを購入できるなら、郊外でもよい、と考える女性が増えるのは当然だろう。
販売物件減少の動きが出ている近畿圏
●京都府、奈良県、大阪府、兵庫県の人気マンションランキング
今回調査で大幅に人気マンションの数が減ったと感じたのは、近畿圏。半年前の調査で、京都府、滋賀県、奈良県、大阪府、兵庫県で31物件が人気マンションに認定されたが、今回人気マンションと認定されたのは京都府、奈良県、大阪府、兵庫県で20物件に留まった。
京都府は8物件から3物件に。大阪府は15物件から10物件に減少した。
前回、高人気指数だったマンションのなかには、一時的に販売を中
売れ行きが落ちたにもかかわらず、以前と同様のテンポで売り出せば、売れていないことが明らかになってしまう。なので、状況をにらみながら発売戸数を減らすという作戦である。
この販売調整は、首都圏でも1年ほど前から起きていた。同じ動きが近畿圏でも起きようとしているのかもしれない。
しかしながら、奈良県、大阪府、兵庫県では極めて高い指数を示すマンションが出ている。「ローレルコート近鉄奈良ザ・レジデンス」(同6.8)や「プレディア高槻北園町」(同4.1)、「Brillia西宮北口The Residence」(同6.8)などだ。
分譲価格が高くなったといっても、近畿圏のマンションは首都圏(特に東京中心部)ほど上昇していない。そのため、物件数減少は一時的な出来事かもしれない。今後の動向を観察したい。
その他地域では、久しぶりに人気マンションが登場した愛知県に注目したい。
●愛知県の人気マンションランキング
今回は、3物件が人気マンションとして認定されたが、いずれも中心地ではなく、住宅地系の場所に建設されるマンションだ。落ち着いた住宅地のマンションを求める人が増えてきた、つまり投資向けではなく、実需層向けの新築マンションが人気を高めている状況が生じている。
最後に、その他エリアの人気マンションをまとめよう。
●広島県、福岡県、沖縄県、北海道の人気マンションランキング
福岡や沖縄、札幌などの地方都市では発売される新築分譲マンションの件数がさらに大きく減ってしまった。
このように大幅な物件減少が生じると、数少ない販売物件の人気が上がる現象が生じがちだ。その動きが出るのか、注目したいところだ。
そのなか、高人気指数物件が出ているのは広島県。広島駅から徒歩5分の「ザ・プレイス広島」が人気指数「4.5」となっている。やはり、便利な場所のマンションは注目度が高く、短期間に完売する可能性が高まる。その状況に変化はないようだ。
販売開始前で超高人気となったマンション
●販売開始前の人気マンションランキング
販売開始前で人気物件の目安・事前人気指数「2」以上となったのは、全国で30物件。半年前の調査では37物件あったので、2割ほど減ったことになる。が、1年前の調査では29物件だったので、同じ水準を維持している、といえるだろう。
そのなかで、販売が開始されれば短期間で完売する可能性が高い「事前人指数10以上」となったのは6物件あった。
事前人気指数で最高値となったのは東京都港区に建設される「シティタワー東京田町」で、事前人気指数は驚異の「20.8」。全180戸と戸数規模が大きいことを考え合わせれば、驚異的な高指数となる。
それに続く、高人気指数物件は「ローレルコート武蔵小杉 ザ・レジデンス」(全75戸で事前人気指数19.0)。第3位は「シティタワー錦糸公園」(全130戸で、同12.8)。第4位は「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」(全112戸で同11.1)。第5位は大阪市北区の「ブランズタワー大阪梅田」(全256戸で、同10.8)。第6位が「ザ・パークハウス 板橋本町」(全60戸で同10.5)となった。
事前人気指数が10を超えた6物件のうち、4物件は総戸数が100戸を超えている。
販売前からの注目度が極めて高いマンションと認定される。
それらに共通するのは建物のつくりのよさ。「シティタワー東京田町」は地上34階建ての免震タワーレジデンスとなり、「ローレルコート武蔵小杉 ザ・レジデンス」は平均専有面積70㎡以上で、「ZEH-M Oriented」と低炭素住宅の認定を受けている。
「ブランズタワー大阪梅田」にいたっては、「ZEH-M Oriented」の上をゆく「ZEH-M Ready」の認定を超高層マンションとしてはじめて取得する事例となる。その上、免震構造を採用しているし、専用の大型防災倉庫を備える住戸が多くなるのも特徴。極めて災害に強いマンションとなる計画である。
このように建物の質を高めると、分譲価格は高くなりがち。それでも、自ら住む目的でマンションを購入する実需層は喜ぶ。
新築分譲マンションは投資目的の購入者から、自ら住む目的の実需層にターゲットを変えているように思えてならない。
「人気指数」、「事前人気指数」の上位マンションをエリアごとにまとめました
販売中マンションの「人気指数」、販売前マンションの「事前人気指数」をエリアごとに調査し、後述する人気物件と認められる条件をクリアした上位マンションを公開する。
今回は、全国を以下8エリアに分けた。
「東京23区内・山手線内側エリア」
「東京23区内・山手線外側エリア」
「東京都市部・埼玉エリア」
「神奈川県エリア」
「千葉県・栃木県エリア」
「愛知県エリア」
「京都府・奈良県・大阪府・兵庫県エリア」
「広島県・福岡県・沖縄県・北海道エリア」
8のエリアごとに「人気マンション」と認定される物件をリスト化して公開する。
これに加えて、全国の販売前マンションから「事前人気指数」が高い物件のリストも公開する。
2024年7月~9月人気指数物件・事前人気指数リスト
・東京23区内・山手線内側エリアの「マンション人気指数」高位物件
・東京23区内・山手線外側エリアの「マンション人気指数」高位物件
・東京市部・埼玉県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・神奈川県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・千葉県・栃木県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・愛知県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・京都府・奈良県・大阪府・兵庫県エリアの「マンション人気指数」高位物件
・広島県・福岡県・沖縄県・北海道エリアの「マンション人気指数」高位物件
・全国の「事前人気指数」上位物件
「人気指数の計算方法」
「新築マンション人気指数」は、資料請求数と販売センター来訪者、そしてマンションの総戸数から算出されるもの。総戸数からみて、多くの人が資料請求をし、販売センターに訪れた物件は指数が高くなり、人気が高い物件とみなされる。
調査期間は3ヶ月。3ヶ月間の資料請求数と販売センター来場組数を聞き取り調査する。資料請求数は10分の1にカウントし、来場組数の実数と合算、それを総戸数(販売対象戸数)で割って、指数を出す。指数1.0以上となるマンションを、人気物件として認定する。
指数が「5.0」を超えると即日完売が発生しやすくなる。「10」を超えれば、全戸が一瞬にして売り切れてしまう可能性が高い。
実際、人気指数10以上のマンションは宣伝を控える。これ以上、客が集まっても対応しきれない、むしろ販売センターが混乱して危険と考えるからだ。だから、「そんなマンションがあったの?知らなかった」という事態が起きがち。大げさな表現ではなく、過去の超人気物件の多くはそのようにして消えていった。
「事前人気指数の計算方法」
「販売前人気指数」は、モデルルームを開く前の資料請求時点での人気度を探るもので、「これからの要注目物件」が浮き上がる指数となる。
その算出方法は、資料請求が始まった時点から調査日までの資料請求数を聞き取り調査する。その数を総戸数で割って指数を算出。指数「2」以上の物件が、販売前人気マンションとして、認定している。