
2025年5月16日
櫻井幸雄の独自データ
独自調査で注目物件が判明 全国新築マンション「人気指数」
2025年1月~3月で、「投資から実需へ」の変化随所に


2000件以上の資料請求、884組もの来場者を集めたのは「転売禁止」物件
2025年1月1日から3月31日までの3ヶ月間、日本一の人気マンションとなったのは、東京都千代田区の「Brillia 二番町」。都心立地だが、タワマンではないし、スケールの大きな再開発物件でもなかった。どちらかというと落ち着いた住宅地系の場所に建設される全104戸の中規模マンションで、「転売禁止」「賃貸禁止」の条件付きで販売された。
つまり、投資目的の購入を排除したのだが、最高30倍の抽選となり、即日完売した。なぜ、このマンションが人気を集めたのか、最新の「マンション人気指数」ランキングとともに解説したい。
マンション人気指数の最新版を公開
「マンション人気指数」は、私が2011年から行っている新築分譲マンションの調査データ。インターネットサイトに出される物件ホームページでの「資料請求数」と販売センターへの「来場者(組)数」から、「人気指数」を算出する(詳細はマンション人気指数の計算方法を参照)。
人気指数は3ヶ月間の数値から算出し、これまで15年間、3カ月に1回もしくは6カ月に1回の調査を続けてきた。
今回の調査期間は2025年1月1日から3月31日まで。
その3ヶ月間で、分譲中マンションで人気物件の目安となる人気指数「1」以上を記録したのは、全国で123物件となった。半年前の前回調査(2024年7月1日~9月30日)では115物件だったので、少しだけ増えたことになる。
1年前の調査で人気マンションと認められたのは全国で148物件だったので、それと比べればまだ少ないのだが、少し上向きの状況が認められた。
今回、短期間に完売する可能性が高い人気指数「5」以上を記録したマンションの数は全国で12物件。半年前の前回調査では7物件だったので、ここでも増加傾向がみられる。
以上の結果から、新築分譲マンションは価格が上昇しても人気が高いと思う人がいるかもしれない。
しかしながら、高人気指数の物件を子細にみてみると、半年前、1年前までと顔ぶれが変わってきていることがわかる。人気マンションの資質に変化がみられるのだ。
数年前まで、人気マンションの中心は、値上がりが期待できる物件。東京の都心立地であったり、再開発で生まれる超高層タワーマンション、駅近の大規模マンションが目立っていた。
これに対し、今回調査で極めて人気指数が高くなったマンションには「東京都港区」も、「再開発」も「タワマン」も「大規模」もない。
東京23区内であっても、住宅地系の場所であったり、総戸数が50戸未満の小規模、そして定期借地権方式により価格を抑えたマンションの名前が並んでいる。
具体的に、人気指数が「5」以上となった人気マンションの名称をまとめると、次のようになる。
人気指数が「5」以上となった物件のうち、「都心」と「大規模」の条件を満たすのは、「ブランズシティ品川ルネキャナル」だけ。あとは、住宅地系の場所に建設される小規模・中規模のマンションが目立つ。といっても、低層ではない。3階建て、4階建ての低層マンションは現実的に人気マンションにはなりにくい。実際に多くの人が支持するのは10階建て前後で「高層(20階建て以上の超高層ではない)」と分類されるマンションだ。
いずれも、「将来の値上がりが期待できるマンション」というより、「抑えた価格」や「つくりのよさ」が際立つ事例となる。つまり、投資目的で購入されるのではなく、自ら住む目的で新築マンションを購入する人たちが求める要素を備えた物件ということになる。
そこから考えられるのは、新築マンションの購入者が「投資目的でマンションを買う人たち」から「マイホームとして、マンションを買う人たち」に変わってきたのではないか、ということだ。
「マイホームとして、マンションを買う人たち」は、実需層とも呼ばれ、本来、マンション購入の中心となってきた人たちだ。
実需層は、この数年、投資目的(もしくは転売目的)でマンションを買う人たちの様子を苦々しく思っていた。「マンションを金儲けの手段にしてほしくない」というのが実需層の本音だろう。金儲けの手段にする人たちのおかげで、むやみに新築マンション価格が上がってしまった、という思いもあった。
しかしながら、いつの時代もマンション相場価格が上がりすぎたときに、投資熱は下がる。「将来、高く売れる。高く貸せる」という期待が下がれば、投資目的で購入する人たちの購入意欲が下がるし、金融機関の融資も慎重になるからだ。
2025年のマンション市況は、そのような段階に入りつつあるとみるべきだろう。暴落はしないが、右肩上がりを期待しにくい、という状況である。
その中、実需層が動き出したとしたら、それは不動産市況がよい方向にむかっていることになる。
この動き、エリアごとにどう出ているかを検証してゆきたい。
山手線内側の都心部で新規発売物件減少が明らかに

今回調査で明らかになったのは、
「21.4」は、販売される戸数「51戸」で計算したもので、地権者住戸53戸を加えた総戸数「104戸」で計算すれば、人気指数「10.5」となる。それでも、極めて高い人気指数だ。。
データ集計後、ゴールデンウィーク期間中に行われた販売では、51戸が1億3650万円~6億2500万円(54.32㎡~104.12㎡の1LDK~3LDK)で販売され、即日完売となった。抽選倍率は平均で10.4倍、最高で30倍だった。
同マンションは東京都都市居住再生促進事業及び千代田区優良建築物等整備事業に該当し、「自ら居住するための住宅を必要とする者」しか購入できない等の制約があった(親族の住宅用に購入することは可能)。転売や賃貸に出す目的の購入はできないマンションなのだ(1戸のみ例外)。
地上19階建て地下1階となる建物は日テレ通りに面している。二番町に地縁のある私の記憶では、番町エリアで最初にお屋敷跡がマンションに変わった場所の1つだった。
それも、「パークマンション」とか「ホーマット」など300㎡クラスの特大住戸をそろえる雲上マンションではなく、普通の人が購入できるスタンダードな3LDK、2LDKをそろえたマンション……番町エリアに住む人たちが、現実的に「住みたい」と思える物件だったため、今回の建て替え分譲でも地縁のある人たちが関心を示した。
一方で、千代田区の番町エリアで駅徒歩1分として割安と判定する人も多く、できれば所有したいというパワーカップルも集まった。地縁がない人も関心を示したことが、高倍率の抽選になった理由と考えられる。
山手線内側で2番目に高い人気指数となった「ザ・パークハウス 麹町三丁目」も「Brillia 二番町」に近い。「番町・麹町」と総括される場所の新築物件だ。いずれも、高額のマンションとなるが、購入できる実需層はいる。それは、都心物件を売却することで購入できる買替え層だ。
すでに都心部でマンションを所有しているため、それを売却することで高額の新築分譲マンションを購入することができる複次取得層(二次取得層や三次取得層)にとって、番町・麹町エリアは、狙ってみたい都心の落ち着いた住宅ゾーン。「南青山と比べると、華やかさがないため、人気が落ちている」とされてきた番町・麹町だが、復調の兆しがみえてきた。
23区内で山手線内側は純粋な都心部=純都心と位置づけられ、これまでマンション市況をリードしてきた場所だ。
その最先端エリアで、実需回帰の動きがでていることは大いに注目すべきだろう。
23区内山手線外側では、投資に向く物件も上位にランクイン

23区内で山手線外側に位置する準都心部では、相変わらず人気物件が豊富だ。
ここ数年、調査を行うごとに40物件以上が人気マンションとして認定されているが、今回調査でも41物件が人気マンションとなった。
このエリアでは、35㎡程度から45㎡程度までの1LDK、2LDKが目立ち、60㎡台のコンパクトな3LDKも多い。なるべく価格を抑え、6000万円台で購入できる1LDKや1億円を切る3LDKを多くするためだ。
一方で、100㎡を超える大型住戸で価格は3億円以上という住戸もみつかり、バリエーションが豊富。幅広いニーズに応えるラインナップが展開されている。
そして、実需向けマンションが目立つようになった山手線内側とは異なり、投資向けとしても魅力的なマンションも相変わらず分譲され続けているエリアでもある。
その代表格となるのは、「リビオタワー品川」だろう。その人気指数は「2.4」。控えめな数字に思えるが、販売総戸数815戸の大規模であることを勘案すると、極めて高い指数と判定される。
実際、リビオタワー品川」では3月29日からの第1期販売で221戸が売り出され、全戸が抽選に。平均倍率12.3倍で最高倍率は139倍になった。
販売後のニュースリリースによると、第1期の価格は1億498万円から5億2998万円。専有面積、間取りはニュースリリースで明らかにされていないのだが、おそらく56平米程度の2LDKから130平米程度の3LDKと考えられる。これを割安と判定する人が多かったため、平均で12倍を超える抽選になったのだろう。当然、投資目的の購入者が多かったはずだ。
23区内で山手線外側では、投資向き物件と実需向き物件が混在しているこの状況、23区内で山手線外側エリアではこの先も続いて行くことが予想される。
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